資本的支出と修繕費
※2012年9月時点の税制をもとに改訂しています。
私は、不動産賃貸業を行っています。アパートを4棟と駐車場を所有していますが、だいぶ年数が経ち多額の修理代がかかるようになってきました。このたび下記のような支出があったのですが、それぞれどのように処理すればよいのでしょうか?
(1)入居者が退去する際の畳・ふすま・壁紙の張り替え ・・・ 20万円(家主負担分)
(2)給湯器が壊れたので交換 ・・・ 16万円
(3)アパートの外壁が壊れたので再塗装 ・・・ 120万円
(4)入居者がなかなか入らないので和室から洋間に変更 ・・・ 60万円
(5)ベランダがないアパートにベランダを設置 ・・・ 150万円
(6)砂利敷きの駐車場をアスファルト敷きに変更 ・・・ 300万円
アパート等の経営をする場合、建物をきれいにしておかないと、入居者が決まらないことが多いので、修理は必要になってきます。その支出した修理代は修繕費として全額経費とすることができる場合と、減価償却資産としなければならない場合があります。この区分は、その修理代が支払われた目的とその金額によって区分をします。以下で詳しく説明します。
修理代を修繕費として全額経費とするか、減価償却資産として計上するかは、それらの支払われた目的によって区分します。
なお、一つの修理・改良の金額が20万円未満の場合、修理・改良等が3年以内の短い周期で支払われている場合には、修繕費として必要経費に計上することができます。
支払われた目的 | 処理区分 |
---|---|
原状回復や維持管理のため | 全額を必要経費に算入 |
使用可能期間の延長や価値の増加 | 減価償却資産 |
壊れたものを新しく買換えるため | 減価償却資産 |
それでは、具体的に見ていきましょう。
上記の支出のうち、(1)については原状回復のため、(3)については原状回復、維持管理のための目的で支出したものと考えられるため、その年の必要経費(修繕費)として処理します。
(2)については、壊れたものを買い換えた場合には減価償却の対象となりますが、10万円以上20万円未満の資産なので一括償却資産を選択すれば、3年で均等に償却することになります。ただし、青色申告を行う中小企業者(従業員数1,000人以下)で、2014年3月31日までの期間に取得した、取得価額30万円未満の減価償却資産は300万円までを必要経費として計上することができます。
(4)、(5)、(6)についてはこれらの支出により、その建物や駐車場の価値が増加すると考えられるため、それぞれの耐用年数にしたがって減価償却することになります。
固定資産の修理・改良に要した費用が上記の区分により明らかにならない場合に、修繕費か資本的支出かの判断をするときは、ある減価償却資産について一つの計画により修理・改良を行った場合、その金額が以下のいずれかの条件に該当すれば、修繕費としてその年の必要経費に計上することになります。
(1)支出した金額が60万円に満たない場合
(2)支出した金額が、その修理・改良を行った資産の前年末における取得価額のおおむね10%以下である場合
この「前年末における取得価額」とは、その固定資産の原始取得価額に、過去にその資産について支出された資本的支出を加算し、またその資産について一部除却があったときにはその除却部分について減算した金額をいいます。
例えば
・当初の取得価額=2,000万円
・前年までの資本的支出=500万円
上記の賃貸用物件について、床や壁等の損傷が著しくなってきたので200万円で改修することとなった場合、この支出は修繕費と資本的支出のどちらに該当するでしょうか?
この例の場合には前年末における取得価額は、当初の取得価額2,000万円+前年までの資本的支出500万円=2,500万円となります。したがって、200万円の改修は形式的区分基準の②の前年末の取得価額のおおむね10%(250万円)以下に該当するので、この支出については修繕費つまり全額必要経費として処理することができます。
修理・改修に要した費用が多額になると必要経費として処理するのか、資本的支出として減価償却の対象になるのか判断が難しい場合もありますが、以上の方法で判断することができます。
修繕費と資本的支出の判断のフローチャートを載せておきますので参考にしてください。
関連リンク
無料相談は各事務所で実施しております。
お気軽にお問い合わせ下さい。
(平 日)9時00分~18時00分 (土 曜)9時00分~18時00分
(日・祝)10時00分~17時00分 ※一部例外日あり