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特集 相続税の現場からの報告

※2012年9月時点の税制をもとに改訂しています。

一.税務調査の現状

 相続税の申告書を提出して一番心配なのは税務調査です。税務調査が来るのは「4件に1件の割合」と言われていますが、財産、特に多くの預貯金が頻繁に動いている相続や、争いがあった相続などは調査の対象として選定される場合が多いようです。調査の時期は申告書を提出してから最初の8月~12月に来る可能性が一番高く、次に2年目の8月~12月、3年目の8月~12月に来なければ税務調査は来ないと言われています。
税務調査の流れは、所轄の税務署から申告書の作成税理士に税務調査に入りたい旨の連絡があり、相続人との日程の調整が行われます。当日は朝10時から調査が始まり午後4時くらいまでかかりますが、午前中に終了ということもあります。調査は2名の税務署職員が相続人の家に訪れ、午前中は聞き取り調査、午後は通帳・権利書等重要書類の確認を行います。
相続税の税務調査で質問される項目はおおむね決まっています。

午前中の聞き取り調査ではまず、被相続人の仕事、趣味、性格、入院歴、病気の状況、亡くなる前の意思があったかどうか。

財産(主に預貯金)の管理者は誰だったのか。医療費はどこから出していたか。生活費はどのように捻出していたか。

以上の質問により「亡くなった方の財産が生前の収入に対して適正な額か」「贈与税の申告もなく家族の名義になった財産はないか」が確認されます。

午後の現地調査では、被相続人が生前に財産(預金通帳、権利書等)を保管していた場所の確認。二次相続の場合には一次相続で名義の書き換えをしているかどうか(一次相続の時にその配偶者が相続したものが漏れていないかどうかの確認)を、前の相続税申告書と突き合わせ(特に預貯金)をします。

被相続人からの贈与についての確認(金額、時期、申告の有無)、贈与後の通帳・証書の保管者。手持ち現金の状況の確認。家に保管してある全ての印鑑の印影をとる。(各印鑑の使用方法の確認)。預金通帳について家族全員分の金融機関・番号・残高・流れの確認。土地の測量図が家に残っていないか(縄延びがないかの確認)。現地を見に行くこともあります。

後日、税務署・納税者・税理士との間で問題点の調整後、税金を納める場合には、修正申告書を提出。戻る部分があれば更正の請求を提出することになります。

 

二.税務調査で注目される預金の流れ

相続税の税務調査で一番問題になるのは現金預金の流れです。特に名義預金の関係は詳しく調べられます。

名義預金というのは、亡くなった方の預貯金が贈与の手続きを経ずに他の家族の名前になっているものです。税理士も申告書作成時には、被相続人の過去何年間かの預貯金の流れを確認します。特に大きい出金に関してはどこへいったのか、亡くなった日現在で他の家族の名義になっていないか等をよく調べます。税務署に相続税の申告書が提出されると、税務署の担当が関係ありそうな全ての金融機関に、相続が発生した日現在の被相続人、相続人、家族の預貯金の残高と、過去何年間かの預貯金の流れの問い合わせがあります。

また、郵便局の貯金については税務署では調べられないという噂がありますが、その点はどうでしょうか。郵便局はコンピューター管理が進んでいますので、地域のセンターに問い合わせると、最新の正確なデータが早めに出てくるそうです。税務調査で郵便局の貯金の申告漏れが見つかると「脱税しようとした」という見解がとられ修正申告時点で重加算税の対象にしようとする調査官が多いようです。

【ケース1】
あるお宅で相続が発生し、その被相続人は農業と不動産賃貸業をしている白色申告者です。白色申告ですので、青色専従者給与等の収入がその配偶者にはありません。この配偶者である「おばあちゃん」は、昔の農家の風習に従って実家からは何の財産ももらっていませんし、誰からの贈与もありませんでした。ところがこの「おばあちゃん」に夫の相続税の申告書作成時に「ご自身の預貯金の額を教えて下さい」と聞いたところ「全然ないよ、6,000万円だけだよ」ということでした。普通のサラリーマンが定年を迎えても、6,000万円もの預金を持っている方はめったにいません。それが何の収入もないはずの「おばあちゃん」が6,000万円という大金を持っているということであればこれは問題です。通常であれば、亡くなったおじいちゃんから流れてきた財産ということになります。

【ケース2】
あるお宅では「おじいちゃん」の相続時に10歳のお孫さんが2,000万円の預金を持っていました。通常の10歳の子供は無収入ですから、贈与されたものか勝手に名義を借りているものかのどちらかです。贈与税の申告書を出していれば受贈財産として確認されますが、その管理の状況、つまり贈与を受けた預貯金の通帳印鑑を誰が保管していたのかということが問題になります。10歳のお子さんは未成年者ですのでその保護者である長男夫婦が通帳印鑑を管理していたのであれば問題はありませんが、たとえ贈与税の申告書を提出していたとしても、贈与したはずの財産の管理者が亡くなった「おじいちゃん」では、実際は贈与は行われずに名義預金ととられる可能性が高いと思われます。

【ケース3】
あるお宅では、毎月「おじいちゃん」の口座から3万円ずつ引き落として、お孫さんの名義で定期貯金を作っていました。年間に直すと36万では贈与税の基礎控除額以下なので、問題がないと思われそうですが、そうではありません。考え方としては定期積金の契約は孫の名義でも「おじいちゃん」のものです。

 満期の時点でお孫さん名義の定期貯金にし管理もお孫さんにすれば、この時点で贈与が完成するということです。共済契約で契約者がお孫さん、掛け金負担者が「おじいちゃん」のケースでも掛け金を落とされている時点では、贈与がなされているとは考えずに、その共済契約の満期の時点で名義・保管者を移したときに、その贈与が行われたと考えます。

以上の実例から、贈与を行う場合には、通帳・印鑑・保管者等を、「おじいちゃん」からほかの家族に確実に変えることが重要です。贈与税の申告書を提出し、「贈与をしました、確かに受け取りました」という贈与の契約書まで作成すると、相続時には名義預金と見なされなくなります。

 

三.土地の評価

 相続税の申告時の土地の評価については注意が必要です。一般的に土地は「そこにあるものだから誰がやってもその評価は変わらない」と思われがちですが、同じ土地を100人の税理士が評価した場合は、100通りの評価があると言われています。それくらいに、土地の評価というのは個別性があります。

この相続税の土地評価は「財産評価基本通達」と「不動産鑑定士による鑑定評価」の2通りがあります。原則は相続が発生した日現在の時価ですが、通常使われるのは財産評価基本通達による評価になります。財産評価基本通達による評価は土地が接する道路の路線価を基に様々な補正率を使って評価減していくものです。この評価減の方法も多種・多様な方法がありますので、使いこなすことによって相当な減額が可能です。

例えば農家の自宅は大きい土地が多いので、広大地補正率を使うことによって大幅な評価減が見込まれます。しかし、土地の価格が毎年下がっている地域では、この財産評価基本通達による評価減では実際に売却出来ない例が見られます。そこで、鑑定評価の検討が行われます。我々の事務所の例でも、農家の自宅で2億円の土地が9,000万円になり、税額で4,400万円下がったり、6億円の評価の土地が2億円になり、税額で2億円少なくなったりした例もあります。税務署の税務調査時にも理論の通った鑑定評価であれば是認されます。倍率評価地域の農家の自宅・山林等は鑑定評価についても検討されることをお勧めします。相続時には様々な土地の評価方法を研究している専門家に依頼されるのが節税につながるといえます。

四.相続税の農地等の納税猶予の取り扱いについて

近年、税務署での納税猶予の取り扱いは厳格に運用されるようになっているようです。従来は税務署の担当官が納税猶予の適用農地を見に来るのは、税務調査など特別の場合のみでした。しかし、ここ数年は納税猶予の適用を受けた相続税の申告書を提出した直後に資産税の担当者が現地を見に来るようになっています。

また、農業委員会の納税猶予の適格者証明についての運用についても、地域によって若干違うようですが、全体的に税務署と同様に厳格になってきているようです。特に植木の生産販売農家ではその生産している植木が苗木の状態であれば農地として認定するが、人の腰の位置より高くなった場合には農地ではなく植木の保管場所であるとの見解を示す農業委員会の担当者もいます。

また、竹の子の生産農家では竹林が適切に管理されているかどうか、傘をさしても歩けるくらいの竹の間隔が保たれているかを、適格者証明許可の判断基準としている担当者もいるようです。

 

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